風に恋して:番外編
気づいていた。

エレナが自分に好意を持っていること。城にやってくることも、差し入れを持ってくることも、わからないことがあるから教えて欲しいと頼むのも、全部……イヴァンに近づきたいからだと。

すぐに……淡い恋は終わるのだろうと思っていた。

だけど、エレナはイヴァンの予想に反してヴィエント城に通い続け、一生懸命な彼女にイヴァンは――

『いー』

サァッと、ルカの風がイヴァンの背中を押すように吹く。

イヴァンは目を閉じた。

「迷惑だと……思うのは、きっとエレナのほうだ」
「イヴァン、さん?」

エレナが涙で震えた声でイヴァンを呼ぶ。それに、胸が締め付けられて。

「俺は、君より一回りも年上で。親も結婚を期待してるし、俺も…………」

レオとリアを見ていて結婚もいいなと思う。ルカに懐かれて、可愛く笑う彼を見ていたら、自分の子供を持ちたいとも思う。その未来を描くとき一緒にいるのが――

「離せなくなる。君はまだ若いから……俺なんかに縛られて欲しくない」

そう言うと、ふわりと風が頬を撫でた。

『なー?』

そして、ルカはエレナを促すように問いかけた。
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