風に恋して:番外編
「私、そんな中途半端な気持ちじゃありません。すぐに離れたくなるような、縛られたくないって思うような気持ちだったら、とっくにこのお城へ来ることはやめています」

エレナはハッキリとした口調で言った。イヴァンが顔を上げると、真っ直ぐに視線がつながった。

『うー!』

ルカが嬉しそうにくるくると研究室を飛び回る。

「好きです、イヴァンさん」

イヴァンは潤んだ瞳で言うエレナの頬に手を添えた。ゆっくりと、距離を近づけていって――

『まー!いー、なー、きゃははっ』

だが、次の瞬間、ルカが扉の方へと吹き付けてイヴァンは口元を押さえた。顔が火照る。

これは、つまり――

「もうっ、ルカ、もう少し我慢してって言ったのに!でも、いい子にできたね?」

リアは優しく微笑みながらケーキと紅茶セットの乗ったトレーを持って研究室に入ってきた。そのトレーをテーブルに置くと、エレナの腕からルカを抱き上げて。

「ごゆっくり、どうぞ」

紅茶のカップは2つしかなかった。最初からそのつもりだったのだ。

『う、うー!』

リアとルカはウキウキとした雰囲気を隠すことなく研究室を出て行ってしまった。
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