風に恋して:番外編
「でもね、覚えてなかったんじゃないよ……」

リアが小さく呟く。

「夢、だと思ってたの。すごくドキドキしたんだから……レオのバカ」

顔を真っ赤にして拗ねるように言うリアは、とても可愛くて。レオはクスッと笑った。これから母親になるとは思えないほど、リアが幼く見えてしまう。

「それって、俺のこと――」
「違うの!そうじゃなくて……っ、その、あっ」

慌てて取り繕うリアの唇を掠める。

「嘘つきはどっちだろうな?」

そっと唇を指でなぞっていくと、リアの呼吸が熱を帯びていく。

「レオ……」
「今は?ドキドキ、しないのか?」

クッと、リアの顎を持ち上げて視線を合わせる。

「……するよ。知ってるくせに」
「あぁ、知っている」

だが、リアをドキドキさせたくて……奮闘しているのはいつだってレオの方だ。リアはそれに気づいていないようだけれど。

レオはそっと顔を近づけた。リアとレオの唇が触れる寸前――
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