恋するマジックアワー
魔法のくちづけ
そして、たったひとりで迎えるクリスマスは容赦なくやってきた。
昨日から冬休みに入っているというのに、わたしはいまだにベッドから抜け出せずにいる。
気が付けば、時計は12時をまわろうとしていた。
いくらなんでも起きなくちゃ……。
のそのそとベッドから這い出ると、カーディガンを羽織ってストーブをつける。
カーテンを開けると白く曇った窓ガラスで、外の様子はよく見えなかった。
キュッと手でこすって空を眺めると、ホワイトクリスマス……なんてのは無縁なほどの快晴。
リビングへ行くと、案の定洸さんの気配はない。
キッチンのテーブルに紙を見つけて恐る恐るそれを手にした。
「……なにコレ……」
そこには慌てて書いたような走り書きで、こう記されていた。
【なにかあったら連絡して。 090-××××-××××】
洸さんの、連絡先……。
はじめて教えてくれた。
って。なにかって、わたしが言えば来てくれるの?
彼女とのクリスマスほったらかして?
昨日の夜、洸さんは明日は家にいないって聞いていた。夜も帰ってこられるかわからないから、戸締り気をつけるようにって。
あの人とパーティすんのかな……。
結局わたしは、何も聞けなかった。
意気地なし。
もしかしたら、少しくらい考えてくれたかもしれないのに。
はあ…とため息をついて、そのメモを見つめた。
指でなぞってみる。
洸さん……
わたしは、洸さんの中にどれくらいいる?
少しは、存在してるのかな……。
これを書いている洸さんを思い浮かべて、胸がキュッと切なくなった。