恋するマジックアワー
「なにがわかんないんだ?」
そこにはまるで今のあたしの心境ににつかわしくない、爽やかな笑顔の男が立っていた。
「……」
「翔ね、暇なんだってぇ。わたしが海ちゃんとここにいるって言ったら来るって聞かなくてさ」
「やめろ」
苦虫をつぶしたみたいな顔をして、牧野はわたしの横に腰を落とした。
「あー腹減った。なんかガッツリしたもんある?」
「ここはパンケーキ専門だよ」
「甘いもんはやだな」
ペラペラとメニューを眺めながら、制服姿に気付いた。
「……部活?」
「おう。 だから暇じゃねっつの」
そう言って、牧野はジロリと留美子を見た。
留美子は留美子で、小さく舌を出してパンケーキを頬張っている。
ほんと、仲良いいな、この二人……。
留美子は牧野が好きとかではなかったけど、牧野の方はどうなんだろう。
なんだかんだ、いつも留美子には甘いよね。