恋するマジックアワー
結局牧野が頼んだのは、大きなソーセージとサラダがついたフランクパンケーキ。
パンにソーセージを巻いて、大きな口でパクッと食べると牧野は「うま」と目を輝かせた。
ほんと留美子といい、美味しそうに食べるな。
そう言えばわたし、きのうからあんまり食べてなかったんだ。
なにか頼もうかな……。
メニューを出して、それを眺めていると留美子が最後のアイスを口に運びながら言った。
「あ、ねね。学校にさ。沙原っちいた?」
「沙原?」
「!」
思わず手に持っていたそれが滑り落ちそうになって、ガバッと顔を上げた。
留美子!
わたしが洸さんと知り合いなのは、ふたりのヒミツなんだよ?
何度も瞬きをして、留美子に訴えかける。
留美子はそんなわたしを横目で見つつ、牧野の言葉を待っている。
「――……ああ、いたな。いつもの場所に」
いつも……。
美術準備室……。
「海ちゃん」
「……」
沙原がどうした?って顔で、牧野がわたしと留美子を交互に見た。
もし、わたしに少しでも可能性があるなら、それにかけたい。
少しでも、洸さんの気持ちがわたしに向いてくれるなら……。
うんん、特別に見てもらわないと。
テーブルの下の籠から鞄を手に取ると、わたしは留美子を見た。
「わたし、行く」
「うんっ、行ってきな! 今日は翔のおごりだから、気にしないでね~」
「牧野も、ありがとう」
「え?」
なんで俺が……って、眉間にグッとシワを寄せた牧野。
にっこりと笑う留美子に手を振って、お店を飛び出した。