恋するマジックアワー
「んもぉ! 沙原っちだよ。あげるんでしょ?」
「えっ!なんで?」
洸さんにあげる?
そんなの無理だよ。
いや、そりゃあげたいなとは思ったけど、でも。
「わたし、フラれてるし」
「違うよ! 海ちゃんはフラれたわけじゃないでしょ? 沙原っちだって一応先生なんだから、海ちゃんの気持ちを聞けなかったってだけで」
え、そうなの!?
自信たっぷりにそう言った留美子。
目をまんまるにしたわたしに留美子はさらに続けた。
「それに海ちゃん、今でも全然沙原っちが好きでしょ?」
「…………」
「海ちゃんが本当に沙原っちのことどうでもいいって言うのなら、わたしはなにも言わないよ? でも……、好きなのに苦しくて、その気持ちの行き場がないなら、どうしてぶつけちゃダメなの?」
留美子……。
いつの間にか、立ち止まっていた。
足元からふと顔を上げると、ショーウィンドウにまるで宝石のようにキラキラと輝くチョコレートたちが並んでいる。
ガラスにうつる自分は、なんとも情けない顔をしていた。