恋するマジックアワー(仮)
観念して隠していたそれを出すと、少しだけシワになっていた。
「なんか迷う理由でもあんの?」
「んー…………」
ありまくりなのです。
唸るように眉を寄せると、牧野は「ふーーん」と小さく呟いた。
それから黙ってしまった牧野。
シンと静まったふたりの間に、下校をする生徒の声が遠くから聞こえた。
吐く息が白い。
冬の夕暮れはすぐに夜を迎えるだろう。
そろそろ帰らなくちゃ。
ああもう、どうしよう。お腹痛くなってきた……。
ここから、美術室は見えない。
でも、間違いなく洸さんはそこにいる。
渡すなら、本当に今しかないんだ。