恋するマジックアワー
「洸さん、ずるいよ……」
視界がジワリと滲む。
でも、泣きたくなんてない。
わたしを見てもくれない人のために、泣きたくなんて……。
想いとはウラハラに、喉の奥がギュッと締め付けられるように熱くなる。
「肝心な時に、先生っていう言葉でわたしを遠ざける。傷つけないようにしてるつもり?優しさのつもりなの?
だけど、そんなの全然優しくないよ。
迷惑ならそう言って!
洸さんの迷惑になりたくない。そう思ってるのに、こんなふうに宙ぶらりんにされるなら、わたしどうしたらいいかわかんなくなる!」
我慢しなくちゃ……。
そう思うのに、自分ではもうどうしよもなかった。
一気にそう吐き捨てて、唇をキュッと噛みしめた。
洸さんが、見てる。
長い前髪の向こうで、アーモンドの瞳が大きく見開き、わたしを射抜いていた。
たった今、言いたい放題まくしたてていた口が一気に大人しくなる。
ウザいって……思われたよね……。
はは……別にいいか。
嫌われちゃったほうが、楽……。
背中にジワリと嫌な汗をかく。震えを隠すように手のひらをギュッと握りこんだその時、洸さんが何か言おうと口を開いた。
ああ、やっと。
わたし、フラれる……。