恋するマジックアワー(仮)
いつまでも行動しないあたしに痺れを切らした牧野は、鞄を肩にひっかけると先に立ち上がった。
「っとに。世話やけんなぁ」
「わっ! え、ま、牧野?……ちょっ」
そのままの勢いで、腕を引かれる。
前のめりになるあたしの手を引いたまま、牧野はズンズン進んでいく。
しばらく歩くと、今度は少し乱暴に繋いでいた手を離した。
「行けよ。迷ってるなら行っちまえ」
「………………」
強く。
強く響く、牧野の言葉。
トンと背中を押され、あたしは一歩を踏み出した。
そこは、美術室につながる廊下の入り口。
「……な、」