恋するマジックアワー
「ちょうど見かけて、指導していたところです」
チョコの入った小さな袋は、生徒指導の先生じゃなくて……。
洸さんが持っていた。
すんでのところでお目当ての物を奪われた先生は、一瞬きょとんとして「ああ」と納得した。
「わかったら、もう学校にこんなの持ってくるんじゃない。
……残念だが、これは僕が没収します。
ほら、君は早く帰りなさい」
「…………」
ボサボサの長い前髪と、ダサイ眼鏡でその表情はわからない。
………………でも。
ご都合主義かな?
食べてくれなくても、他のかわいそうなチョコたちと同じ運命になったとしても。
それでもかまわない。
わたしは、洸さんがあの先生から守ってくれたみたいに感じたんだ。
苦しくて、切なくて、胸が張り裂けそうだった。
――それから。
わたしのチョコはどうなったかわからないまま。
洸さんを好きな気持ちだけが、また増えた。