恋するマジックアワー

駅前は今日も賑わっていた。

休日を楽しむたくさんの人の波をかき分けながら、わたしはひとり、必死になっていた。

寒いからってグルグルにまいたマフラーが、今は暑い。
滲む汗を額で拭い、建物の影から様子を伺う。


「わたし……なにしてんの」


気になって、気になって。
来てしまった……。

衝動って怖い。

洸さんは駅に向かってるっぽい。電車に乗っちゃったら、後戻りできない。
今ならまだ引き返せる。


「……もしデートとかだったら……。はっ……まさか、お見合いなんてこと……」


うう……やっぱり気になる!


こんなにたくさんの人いても、見失わない。
ばっと影から飛び出して、さっそうと歩くその後ろ姿を追いかけた。



洸さんは、すごく目立つ。

だって、満員電車でもすぐにわかった。
それにすれ違う女の人達が、洸さんを振り返っていた。

キレイ目なスーツを着た洸さん。
髪型だって、先生の時みたいに野暮ったい感じじゃなくて、無造作にセットされていて、すごく似合ってる。

初めて洸さんに会った時も思ったけど、本当にずるいくらい、かっこいい。


電車に揺られて1時間。
ひとりでこんな場所まで来ることあんまりなくて、少しビビってしまう。

人が多くて助かった。これなら、わたしがやらかして洸さんの視界に入らない限り見つからない。



「どこに行くんだろう……」


その答えは、すぐにわかった。

駅から出てすぐに、洸さんはなにかの建物に入って行った。


ここって……、


「結婚、式場?」



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