恋するマジックアワー
ああ、もう!
わたし知らないんだから!
キュッと唇を引き締めて、背筋を伸ばす。
結婚式は、ついこの間参加した。
ベールを持つなんて大役、間違って連れて来られたわたしなんかがして、怒られちゃうんじゃないの?
普通だったら、小さな子供とか、甥っ子姪っ子に頼む事が多いはずなのに……。
まさか、わたしがそれに見えちゃったのかな?
そしたら、その本人は?
もおぉぉぉ!
ゆっくりと歩みを進める新婦と、そのお父さん。
わたしはふたりの後に続いた。
参列者の温かな視線が集まるのを感じる。
ごめんなさい……。こんな関係ない人がいて……。
ベールを持つ自分の両手だけをジッと見つめて、ただただ前に進むことだけに集中した。
でも、わたしは気付いてしまった……。
みんながみんな、ニコニコと笑顔に溢れているのに、ただひとり、その顔が驚きに染まっている人がいることに。
こ、洸さん!
見失ったと思ったら、そんなところに!
無表情を決め込んでいたのに、ついギョッとしてしまった。
そんなわたしに、大きく見開かれていた洸さんの瞳がジトッと細められた。
ひええええ。