恋するマジックアワー
ちょちょちょ、ちょっと待って?
おねーさん……。
じゃあ、そのおねーさんは一体どこ?
「あの、わたし! 愛さんが住んでるって聞いて、それでシェアできる人探してるって聞いて。一緒に住んでた人が海外に行く事になったからって。だからわたし! 鍵ももらってて、その……もう、家には帰れないって言うか、だから、ここに住めないと困るんですけど!」
ああ、もうパニック。
何言ってるかわからない。
とりあえず、ペラペラと言葉が口をついて出た。
ただ黙ってそれを聞いていた愛さんの弟。
ソファに背中を預けると、うーんと宙を仰いだ。
「まあ、落ち着いて」
なだめるように言われて、グッと唇を噛んだ。
「……」
「まず。俺は姉貴に頼まれてここにいます」
頼まれて?
「突然海外に転勤が決まったけど、数年で帰ってくるからそれまでここに住んでくれって」
「……はあ」
「その間の家賃は同居人がいるから、半分でいいって」
「……」
その同居人が、わたし?
首を傾げていると、愛さんの弟はわたしを見上げてにっこり笑った。