恋するマジックアワー

ちょちょちょ、ちょっと待って?

おねーさん……。

じゃあ、そのおねーさんは一体どこ?



「あの、わたし! 愛さんが住んでるって聞いて、それでシェアできる人探してるって聞いて。一緒に住んでた人が海外に行く事になったからって。だからわたし! 鍵ももらってて、その……もう、家には帰れないって言うか、だから、ここに住めないと困るんですけど!」



ああ、もうパニック。

何言ってるかわからない。



とりあえず、ペラペラと言葉が口をついて出た。


ただ黙ってそれを聞いていた愛さんの弟。
ソファに背中を預けると、うーんと宙を仰いだ。



「まあ、落ち着いて」



なだめるように言われて、グッと唇を噛んだ。



「……」

「まず。俺は姉貴に頼まれてここにいます」



頼まれて?


「突然海外に転勤が決まったけど、数年で帰ってくるからそれまでここに住んでくれって」

「……はあ」

「その間の家賃は同居人がいるから、半分でいいって」

「……」


その同居人が、わたし?


首を傾げていると、愛さんの弟はわたしを見上げてにっこり笑った。



< 17 / 194 >

この作品をシェア

pagetop