恋するマジックアワー
えりあしをくしゃりと持ち上げて、眉を下げた洸さんは後ろから手をのばして引き出しを開ける。
見覚えのある、小さな紙袋。
まだ、中身は入ってるようで、洸さんが持ち上げる時にカサって音がした。
「……本当は、他の生徒から没収したものと同じように佐藤先生に預けないといけなかったんだけど」
佐藤先生は、あの生徒指導の先生のことだ。
わたしはただ洸さんの言葉を待った。
今、どんな顔してるんだろう。
そう思ったけど、逆光になった洸さんの顔はよくわからなかった。
「海ちゃんが一生懸命作ってたの、俺知ってるし」
「……洸さん」
そっか。見られちゃってたもんね。
同居人として、かわいそうになっちゃったのか。
……同情票。
それでもいいかも。
だって、このチョコは、洸さんの手元に渡ったんだから……。
なんだら胸の中がくすぐったい。
ジッとチョコレートの入った袋を見つめる。
洸さんはチラリと視線だけ上げると、小さくため息をついた。
それから……。