恋するマジックアワー


綺麗な顔は、笑うと子供っぽくなる。

なぜかギュッと心臓を掴まれたみたいな感じがして、わたしは意味もなく瞬きを繰り返した。



「結論から言うと。
俺も君がいないと困るわけだ。家賃全部俺が払うのは、聞いてた話と違うからな」

「……え?」



なんか言い方が気になるな。

眉間にシワを寄せたわたしに、ニコニコと愛想を振りまくその笑顔が、さっきとまるで雰囲気違うから戸惑った。


そんなわたしをよそにスックと立ち上がると、ずいぶん背の高い弟はまたいきなり手を掴んできた。


「ひッ」



ビクリと体が飛び跳ねて、ギョッとして見上げた。



「と言うわけで。よろしくね。海ちゃん」


う、海ちゃんッ!!?


さらに目を見開いたわたしの手を、ブンブンと振る彼は小首を傾げて笑った。



「俺、(こう)沙原洸(さはらこう)。こうちゃんって呼んでもいいよ」



こ、こーちゃん?

わははって楽しそうに笑う洸さんに、今度は違う意味で目眩を感じた。


やっぱり、わたし……間違えた……かも?




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