恋するマジックアワー

留美子の言葉にむせかえるように反応したその声にハッとする。
振り返ると、そこには白いゼッケンとブルーのリボンを腕に巻いた三嶋くんと牧野がいた。


「立花、大丈夫か?」


そう言ってわたしの顔を覗き込んだのは牧野だ。


「いや……あはは」


大丈夫かって?

……全ッ然大丈夫なんかじゃない!!
なにを隠そう、わたし……球技は本当にダメなんだよぉぉ!


「海ちゃん心配しないで! 海ちゃんは絶対わたしが守るからッ」


そう言ってガッツポーズをして見せた留美子に苦笑いを送る。

留美子はこんなにふんわりしてて、可愛いのに運動神経抜群なんだよね。
そのセンスを少しだけでもわたしにわけて欲しい……。


「ボール回ってきたら、俺かサトシに回して。サポートするし」

「……ありがとう、牧野。留美子も」



うう。 2人の優しさが心苦しい。

学食免除……。
絶対、勝ちたい。



「立花さん」

「?」



バッシュの靴ひもを結んでいた三嶋くんがわたしを見上げた。


「大丈夫。 俺たち絶対勝てるよ」

「……うん。そうだよね」


コクリと頷くと、目元を和らげた三嶋くんが立ち上がった。
背の高い牧野と同じくらい……それより少しだけ目線が上の三嶋くんと向かい合う。

突然のことに目を瞬かせていると、その腕をわたしに差し出した。


「リボン、結びなおしてくれる?」

「あ、うん。もちろん」


ほどけないようにギュッときつく縛る。
三嶋くんはありがとうって笑顔を零した。


ホイッスルの音が体育館に響く。
次がわたしたちのクラスの番だ。


最後のクラスマッチだもん。 みんなで笑って終わりたい。

ぎゅっとリボンを結んで、ふうって息を吐いた。

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