恋するマジックアワー
見ると、すでにキッチンカウンターに洸さんの姿があった。
ど、どうしよう……。
お弁当、作らなくちゃ……。
いいんだよね?
そーっと静かに扉を開けて、足を滑り込ませた。
て、そこに洸さんがいるからこんな事してもどーせバレちゃうんだけど。
「……。おはようございます」
意を決して自分から声をかけた。
湯気が立ち上るコーヒーカップに口をつけていた洸さんが、視線だけを向けた。
その手元には新聞が広げられてる。
洸さんは、わたしがいた事なんかすっかり忘れてたみたいに、目を丸くした。
……あれ、わたしの事覚えてない?
昨日ここで初めて会ったあの時のように、その眉間にシワを寄せた洸さん。
わたし……と言うか、この制服を見てる気が……。
「洸さん?」
「……」
返事もしてくれない……。
昨日、よろしくってそう言ったのは、洸さんの方なのに。
「……、あの台所、使ってもいいですか?お弁当作りたくて」
オズオズと歩み出ると、そこでやっと洸さんは「どうぞ」って頷いてくれた。