恋するマジックアワー
キッチンに立って、冷蔵庫から卵を取り出した。
よかった、材料は昨日のうちに買っておいて。
卵をボールに割りいれて、フライパンを熱する。
炊き立てのご飯も、小さな弁当箱に詰めた。
「それだけなの?」
「え?」
急に声をかけられて、手元から顔を上げた。
洸さんはずっとそこにいたようで、視線はお弁当箱に注がれている。
ああ、これの事か……。
「変ですか?」
普通だと思うけどなぁ……。
わたしだって、一応女子だし食べ過ぎには気を付けてる。
手のひらの上から少し零れるくらいの大きさの弁当箱を眺めながら、首を傾げた。
「え?あー違う違う。 海ちゃんの年頃は成長期なんだからさ」
「なんですか、それ」
「しっかり食べて大きくなりなさいってこと」
……む。
どうせまだ子供ですよ。
言い返したかったけど、やめておいた。