恋するマジックアワー(仮)
そこはまるで異空間。
静寂の中、小鳥のさえずりがどこからか聞こえてくる。
外国の有名な美術館とかテレビで見たことあるけど、そことはまた違った雰囲気だった。
いろんな作家の作品が一定の間隔で並んでいる。
写真や、絵画、様々な作品があって圧倒されてしまう。
人物画、風景画。
真剣に作品を眺める三嶋くん。
あたしはというと、ある絵に目がとまった。
わあ、この絵ステキ。
どこの風景だろう。ヨーロッパかな。
色彩豊かで、陽だまりのようなあたたかい作風だ。
作者は……。
「……沙原、愛」
ん?
沙原愛って、あの沙原愛?
あたしの知ってる名前で合ってるなら、この人は洸さんのお姉さんのはず。
洸さんのお姉さんも絵を描いてる人だっけ?
仕事で海外に行っているのは聞いてるけど、どんな仕事までは聞いたことなかった。
洸さんもすごく素敵な絵を描くと思ったけど、姉弟でこんなすごい作品を描くなんて。
制作日は、5年くらい前か……。
「あれ、立花この人知ってるの?」
「え」
いつの間にか隣に来ていた三嶋くんが言った。
「知ってるというか、名前だけ知っていたというか」
間違ってはいないよね?
洸さんのお姉さんに会ったことないし、絵を描いてることも知らなかったんだし。
「俺、この人の作品好きなんだよ。 だけど風景画は珍しいな、抽象派の人だからさ」
「へえ」
抽象派かぁ。
たしか独自の解釈で描く人たちのことを言うんだったよね。
「今は活動してないみたいなんだけど、この人の作品があるってことは……もしかしてここにいたりすんのかな」
「えっ」
そうなの?
愛さん帰ってきてたりするの!?
洸さんからなにも聞いてないんだけど。
ふと周りを見渡してギョッとした。
いる……。
いるじゃん……・。
お、おおお、弟の方が…………!!!!!