恋するマジックアワー(仮)

フロアの先。
喫茶スペースで誰かと談笑してる。


気が付かなかった。

大きな窓ガラスから光が降り注ぐその場所は、淡く輝く粒子の中にいるみたい。
暗い展示スペースからだと、そこだけ違う世界に見える。

学校や家にいるときの、ラフで野暮ったい洸さんじゃない。

無造作にセットした髪。
大人っぽくてキレイ目のスタイル。

洸さんだけど、知らない人みたい。


一緒にいる人はスーツ姿で、友達って感じじゃなさそうだけど。
なんの話してるんだろう。



ぼんやりとその光景をを見つめていた。
ーーその時。


「!」


目が……あってしまった。

ふと、視線を上げた洸さん。
その瞳がまっすぐにあたしをとらえた。


一瞬だった。
驚いたように目を大きく見開いた洸さん。
でもそれはすぐに逸らされてしまった。

わあ……そんなあからさまに。
なにか大事な話の途中なのかな。



「知り合い?」

「えっ」



三嶋くんがあたしの顔を不思議そうに覗き込んだ。


「あそこの席に座ってる人、こっち見てたよな? 知り合いだった?」

「ええーと」


どうしよう。
なんて言えば……。

沙原先生って言ってもいいのかな。
それとも、沙原愛さんの弟だよ……はダメだろうし。

もう知らない人って言ったほうが……。


「海ちゃん」



え……



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