恋するマジックアワー
呑気にコーヒーを飲む洸さんをチラリと見上げた。
「……洸さんは、これからお仕事?」
「ん?」
今度は洸さんが顔を上げた。
昨日のTシャツに短パン姿のラフな洸さんじゃなくて。
ピシッとスーツを着ていて、その首にはダークブルーのネクタイぶら下がっていた。
昨日と違うのはそれだけじゃない。
髪……もしゃもしゃ……。
昨日はオシャレにワックスつけてセットしてたのに。
仕事なのに、そんな感じで行くのかな……。
まるで寝癖のような、そうでないような、よくわからない状態の髪をぼんやりと眺めた。
って、やば。
のんびりしてる場合じゃなかった。
今までは電車通学だったけど、今日からは歩いて行かなくちゃいけないんだ。
わたしは慌ててお弁当におかずをつめこむと、鞄と携帯を掴んで、玄関へ向かった。
と、その時。
今までずっと黙っていた洸さんが、わたしを呼び止めた。
「海ちゃん、あのさ」
「はい」
リビングのドアノブを掴んだまま、顔だけ振り返る。
すぐに洸さんと目が合ったけど、なぜかすぐに逸らされた。
ん?