恋するマジックアワー(仮)

どうすることもできないまま、日曜日の夜になっていた。

テーブルの上には大きなお鍋。
キッチンにはたくさんの野菜と、おいしそうなお肉たち。
愛さんは鼻歌交じりにチーズを切っている。


ふだんのあたしならはしゃいでただろう。
チーズもお肉も大好き。

でも今は……。

パントリーに入っていく洸さんの姿が見える。
すかさず追いかけて、思わずその背中に縋り付いた。

ちょうどワインセラーに手をかけた洸さん。
ギョッとしたように振り返った。


「洸さん、ど、どどうしよう……!」

「え?」

「あたし、愛さんとじゃなくて洸さんと住んでるってパパたちに言ってない。パパにバレたら絶対に戻ってこいって言われちゃう。どうしよう洸さんっ」


キレイなアーモンドの形をした瞳。
その瞳を見開いて、何度も瞬きをする洸さん。

困ってる。
困らせてるのはわかってるけど、だけどあたしもどうしたらいいのかわかんないんだもん。


新婚のふたり。
そのふたりの家に、あたしの居場所はない。

パパも真帆さんもそんなつもりはないってわかってる。
だけど、あたし……。




「帰りたくない……」

「…………」


キュっと唇をかみしめた。
そうしていないと、今にも泣きそうだった。

と、その時。


ーーーピンポーン


まるで時間切れを知らしめるかのように、インターフォンがなった。



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