恋するマジックアワー(仮)
「おはよー」
「おーっす」
学校はすでにたくさんの生徒で溢れかえっていた。
下駄箱で、靴を履き替えていると目の前にノートが差し出された。
『立花海』と書かれたそのノートが引っ込んで、かわりに真っ黒に日焼けした肌が現れた。
「おす、立花」
「……あ、おはよ」
顔を見なくてもわかる。
日に焼けた肌。
腕。
その透明感ある声色。
この暑さがうそのような、爽やかな笑顔。
肌と同じように日に焼けた短い髪。
彼の名前は牧野翔(まきの しょう)。
同じクラスメイトで、隣の席の男の子だった。
勝手に心臓が鼓動を速くする。
それを自覚ししつつ、あたしは平静を装って顔を上げた。
「……なんでコレを、牧野が?」
夏休みの課題。
たしかこのノートは、一週間前に留美子に貸したはず。
そこまで考えて、あーそっかって納得。