恋するマジックアワー(仮)
「留美子、あつい」
呆れつつ、毎朝こうして飛びついてくる留美子をにくめない。
キャラメル色のフワフワしたボブがあたしを覗き込んだ。
少し茶色がかったその瞳は、くりっとしていて。
まるで仔犬。
なぜかあたしに物凄く懐いていて、いつもこうして纏わりつかれていた。
「えへへ~。あー、翔、それあたしがるみちゃんに借りてるんだよ!ずるいっ」
「は?ずるいってなんだよ。もとはと言えばお前が課題やってなかったのが悪いんじゃん」
「ええ、何それ。それを翔があたしに言うの?自分だってやってなかったのに」
朝から眩しいくらい仲がいい……。
このふたりは幼稚園の頃からの幼馴染で、周囲が認める公認の中ってやつ。
顔を突き合わせればこうして何かと言い合ってるけど、それも仲がいいからでしょ?
これで付き合ってないって言うんだから、それこそ呆れると言うか。
じれったいというか。
でも、留美子からは牧野が好きって話は、一度も聞いた事なかった。