恋するマジックアワー
もうすぐHR。
その後に始業式が待ってる。
こんな暑いってのに、わたし達は体育館に詰め込まれるんだ。
「あ、課題やっちゃわないと。海ちゃんごめんね」
そう言って留美子は自分の席に慌てて戻っていく。
その背中を眺めてから、もう一度窓の外に視線を落とした。
「……」
さっきの教室。
そこにいるのは、美術の『さはら先生』。
その先生が……
大きく、手招きしてる。
……へ?
キョロキョロして、振り返ったまま視線だけを戻す。
すると、遠くにいるその先生は、まるで苛立たしげだというように、大きく身振り手振りで『お前だよ、お前!』と指差しているようだった。
え、え?わたし!?
恐る恐るピッと、自身を指差した。
いやいや、なんで?
だって、わたし美術専攻してないし。
部員でもないし。
まして、そんなセンスかけらもないよ?
すると、そんなわたしの不安をよそに、その『さはら先生』は大きく相槌を打って見せた。
えええ!
て、事は……まさか……
ガタンッ
勢いよく席を立つと、教室を飛び出した。
キーンコーン
カーンコーン
予鈴が鳴り響く中、わたしは全速力で廊下をひた走っていた。