恋するマジックアワー
ダサメガネの先生
――ガラガラ!
薄暗い廊下を走り、目的の教室の扉を勢いよく引いた。
南向きの教室には、眩いほどの日差しが降り注いでいて一瞬目が眩む。
まぶし……。
鼻をつく絵の具独特の匂い。
まだ慣れない目をキュッと凝らすと、白く浮きだった教室の中に、動く人影を見つけた。
クリーム色のカーテンが、風にフワリと揺れて、窓際にいるその影を隠す。
ドクン
ドクン
走ってきたせいだ。
心臓の音が、まるで耳元で聞こえる。
わたしは、息をスッと吸い込んで、一歩教室に足を踏み入れると、静かに扉を閉めた。
このシルエット……
『サハラ先生』って……。
ハタハタと風に揺れるカーテンが、スローモーションのように落ちていく。
すると、その向こう側にダークブルーのネクタイが現れた。
「……」
「……海ちゃん」
ハスキーで耳に残る声。
乱れた真っ黒な髪。
スッと伸びた長身。
真っ白なワイシャツ。
ああ、やっぱり。
そこにいるのは、紛れもなくわたしの同居人。
……洸さんの姿だった。