恋するマジックアワー

まだ眠たそうな洸さん。寝癖のついた髪をクシャリとかき回して、何度も瞬きを繰り返した。

なんだそれは……子供みたいな事するな……。

心臓が鷲掴みにされたみたいにギュッとなる。



……っは!
わ、わたし、なにを……。

ドギマギしているわたしをまっすぐに見つめるその瞳が、この胸の奥にくすぶってる知らない感情を探し出してしまいそうで……。

慌てて顔を背けた。

なにか、なにか言わなくちゃ!


「あ……あの、これは………別に意味はなくて……じゃなくて!あのっ」


この場から逃げ出したい。とにかく、今は洸さんの前から消えなくちゃ!
勢いよく飛び退くと、近くにあったキャンパスを倒してしまった。

ガタガタ!


「わっ、ご、ごめんなさい」

「あーあ。なにしてんの、いいからホラ」


呆れたようにそう言って、洸さんはわたしの横を通り過ぎると体を屈めて倒れたキャンパスを元の位置に戻した。

あれ?これって……。

洸さんの机の上にあったものと同じ?



「立花」

「はっ、はい!」



急に視界を遮られ、洸さんがわたしの顔を覗き込んできた。
無造作な黒髪がふわりと揺れて、甘い香りを連れてくる。

ああ、ダメ。
今日はダメ。調子狂う。

そもそも!洸さんは距離の取り方おかしいから!

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