恋するマジックアワー
ふあああって大きなあくびをして、その両手を投げ出した洸さんは、コキコキって首を鳴らす。
それからわたしを振り返って、不思議そうに首を傾げた。
ビクって小さく体が反応する。
「立花」
「えっ」
「ところで君、なんでここにいるの?」
「ええっ」
今更それを言う!?
「……待て。顔赤いけど、まさかまた熱あるんじゃないか?」
「え、」
は? なにそれ……まったく自分の行動に無自覚すぎる。
それともこれも計算?
洸さんは、眉間にグッとシワを寄せたわたしの額に手を伸ばしてきた。
遠慮なく触れた手のひら。避ける暇さえなかった。
ドクン
また、わたしの身体を焦がす。
ドクン ドクン
――バシンッ!
あ……。
思わず振り払ってしまった。
「あの……わたし……失礼しますッ」
思い切り頭を下げて、そのまま踵を返して走り出した。
だって。
だって、こんなの間違ってる。
この胸の高鳴りは、洸さんの距離の取り方がおかしいからで。