恋するマジックアワー
留美子の涙
誰もいない教室は、まるで別世界。
いつもいるはずの居場所が、まるで知らない場所へと変わっている。
窓際の席。
そこは紛れもなくわたしの席で、留美子は、真ん中の一番前。
教室の入り口で息を整えるわたしに、留美子は笑顔を向けた。
「もう来てたんだ。今日は早いね?」
「あ……今日は日直だから」
ホッとしたように肩の力を抜いた留美子。
いつものふにゃっとした笑顔で、わたしの机の上に突っ伏した。
「それにしても……海ちゃんの席って気持ちいいね。陽当たりもばっちりだしうらやましい。ちょっと座ってただけだけど、眠くなってきちゃった」
「あは。留美子はセンセの目の前だもんね」
「しかも陽はあたらず。だから今のうちに寝るー」
「わたしはどこに座ればいいのよ」
牧野の席も、日当たりばっちりだけど。
なんてちょっと思ってみたり。
……だけど不思議なんだよね。
あの秋祭りから1ヶ月はたってるはずなのに、牧野と留美子からは付き合ってる雰囲気を感じないんだ。
わたしは、留美子の口から言ってくれるの待ってはいるんだけど……。
もしかして、まだわたしに遠慮しちゃってるのかな。
優しいふたりだからありえるんだけど……
でももうそんな事しなくていいのに。