恋するマジックアワー

窓の外に視線を移す。

ここからは美術室が見える。
カーテンがふわりふわりと揺れている。

そっと手首に触れる。
まだ、熱が引かないそこをぎゅっと握りしめた。



わたし……
さっきなんであんなことしちゃったのかな。


洸さんなんて、ただの同居人じゃん。
家賃折半してくれるありがたい存在には変わりないけど……。でも!!
ボサボサ頭の野暮ったい美術講師じゃん!




うわぁぁん!
ばかばか!わたしのばかーー!!




頭の中は大パニック。
そんな中視線を感じて顔を上げた。
見ると、目を閉じていた留美子が頬杖をついたままわたしをジッと見つめていて。


目が合うと、ふわりと微笑んだ。


「留美子?」


留美子は笑うととても可愛い。
垂れ目の大きな瞳。小さな鼻とぷっくりと熟れた果実のような唇。
薔薇のように色づいた頬のベビーフェイス。

彼女が笑うと、本当に花が咲いたようにあたたかな気持ちになる。

その笑顔が好きだった。

わたしにはない、その雰囲気。

一部の女子からは、ぶりっ子とか言われてるのをわたしは知っていた。
でも、そんなのは関係ない。留美子はいつもわたしをいちばんに考えてくれて、本当に友達思いの優しい子なのだ。

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