恋するマジックアワー(仮)
「あ。悪ぃ、悪ぃ」
洸さんはそう言ってタオルを手に取ると、そのままリビングへ消えて行った。
―――パタン。
虚しく響く、ドアの音。
な、な、な…………。
ワナワナ小刻みに震える体。
まだしっかり拭き切れてなくて、でもそんなのもうどうでもよくて、あたしは濡れたまま下着を身に着けた。
いつもなら、脱衣所に鍵をかけるのに……。
洸さんが居ないからって、油断してた……。
もぉおお、あたしのバカっ!
バカバカバカ!
いやいやいやいや。
それにしてもだよ!
さっきのなに!?なんなわけ!!?
何事もなかったみたいに……。
なにが『わりー、わりー』よっ!全然悪いと思ってないじゃんっ!
仮にも17歳の乙女のハダカを見たわけでしょ?
もっと、動揺してもいいんじゃないの?
……はっ!
あたしの事……お、女と思ってないとか?
ありえすぎて悔しい……!!!
服を着て、意を決してリビングへ向かう。
文句。
……文句言ってやりたい。
だってくやしい!!!!
間接照明だけの室内は、オレンジの優しい光に包まれていた。
洸さんはそんな光のすぐそばで、濡れた髪を拭いていて。
ガシガシと乱暴に拭くその姿に、一瞬で目を奪われた。
ーー……ドクン
あー、もう……なにコレ。
なんで電気つけてないの?煌々と照らされてても困るんだけど。
あたしが来た事に気付くと、洸さんはその手を止めて顔を上げた。