恋するマジックアワー(仮)

一言なんか言いたかった。
なんならその頬グーで殴ってやりたかった。


なのに……。
洸さんと目があった瞬間、そんなの全部全部どっか吹っ飛んでいっちゃった。


心臓、ありえないくらい速い。


うう。のぼせてるのかな。

顔だけじゃない、全身が熱くて。
火照ってて……。


喉から心臓が飛び出しそう。




洸さんに見つめられて、足元がおぼつかない。

お風呂上がりの口の中は、すっかり水分が飛んでしまって。
もうカラカラだ。

身体の全部が、水分を欲していた。

根っこが生えたみたいに、固まっていた足を何とか動かしてキッチンに入ると、冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。

ペットボトルには、『うみ』と見慣れた文字が書いてある。

名前が書いてあるのはあたし。
何も書いてないのは、洸さんの物。

緊張のあまり、捻った蓋が、コロコロと床に転がり落ちた。


あわわ


まるで意志があるかのように転がる蓋。

追いかけて、その足がまた固まった。



「……」



ヒョイと拾い上げられたそれが、あたしの方へ差し出された。


……なんでそこに転がるのよ、蓋っ!

忌々しく睨んでいると、いきなり手からペットボトルが抜き取られた。




へ?

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