恋するマジックアワー
午後の授業はほんと退屈で。
ましてや女子のやるフットボールなんて、ゲームとは言えなくて。
笑い声とボールを蹴る音、それと外野からの声援をぼんやりと聞く。
「ボール行ったよぉ」
「やぁ。無理無理」
とか言いながら、その子の蹴ったボールは勢いよくゴールへ吸い込まれた。
「ねえ、海ちゃん」
同じようにボーっとグランドを眺めていた留美子が、まるで独り言みたいに言った。
「わたしね?ずっと考えてたんだ」
「うん?」
同じタイミングで留美子も顔を上げた。
「あの人って、沙原っちだよね?」
「……え」
頭真っ白。
たぶんここは否定するところ。
でも、わたしの口からは気の利いた言葉は一つも出てこなくて、ただ留美子をジッと見つめてしまった。
「そかそか。それで納得」
「え?あ、あの、留美子……ち、ちが……」
ハッとして、慌てて言葉を探す。
思いっきり動揺するわたしに、留美子はフワリと表情を和らげた。
「秘密なんでしょ? わたし、誰にも言わないよ?だから、困ってることあったら、相談してよ。海ちゃん」
「……………、う、留美子ぉ」
にっこりと微笑む留美子が、すごく頼もしくて思わず抱きついてしまった。
胸の中にあった鉛みたいに重たい気持ちが、ふっと軽くなった気がして。
ああ、わたし……。
やっぱり誰かに聞いて欲しかったんだ。
って、そう思った。