恋するマジックアワー(仮)
次の日の目覚めも最悪だった。
「……」
全っ然寝れなかった……。
少しだけ開いた窓から、肌寒い風が吹き込んでくる。
うう……。
せっかく風邪なおったのに、窓閉め忘れちゃった。
ブルッと身震いしながら起きて、すぐに制服に着替える。
鏡の中を覗き込むと、目の下のクマが悲惨だった。
それもこれも、ぜーんぶ洸さんのせいなんだから。
実はあれから、洸さんに呼び止められたんだけど……
それを振り切って部屋に飛び込んで、ついでに鍵もかけた。
『どうした?』『ごめんて』ってドア越しに洸さんの心配する声がして……。
もっと頭の中ぐちゃぐちゃになっちゃって。
だから結果的に無視する感じになっちゃったけど。
着替えを見られ、間接キスまでしておいて……。
ううう、ほんと無神経にもほどがあるっ!
ああ、ダメだ。
思い出したら腹立ってきた!
きっと今日も洸さんは、早くから学校へ行ってしまっただろう。
顔を合わさなくて済む……。
昨日は特別で。また、会わない日々。
それだけが、少しだけ救いだった。
でも……。
――ガチャ
油断してた。
え……なんで……
ドアを開けたまま固まる。
そのあたしに気付いて、ダークブルーのネクタイをキュッと締めたのは、最近はいないハズの洸さんだった。