恋するマジックアワー
静かな浴室に、シャワーの音がやたら響く。
きっとこの音、洸さんに聞こえてる。
でも、あの人はそれでもなんとも思わないんだろうなぁ。
悔しいな。
……って。
別に、洸さんにどんな風に思われてても、関係ないじゃん。
ないない。
「……じゃないとわたし……」
そこまで考えたところで両手でお湯をすくうと、一気に顔にかけた。
この胸の中のモヤモヤに名前がついちゃいそうで。
だけどそれはダメな気がして……。
だからもう考えないように。
ジャブジャブと顔を洗って、この気持ちも一緒に洗い流す。
そうだよ。わたしたちはただの同居人。
それ以上でも、以下でもない。
それだけ。
それだけの関係なのに、わたしは一体何をそんなに意固地になってるんだ。
もう無視とかやめよう。
大人になるのよ、海。
よし!
明日からちゃんと普通に、笑顔で。
そう決めて、お風呂を後にした。
……のは、よかったんだけど……。
「……」
なんでいるの?
誰もいないはずだったリビングでわたしを待ち構えていのは、ただの同居人のはずの洸さん。
てか、なにしてんの?
ソファの前で、正座なんかしちゃって。
首を捻ったわたしを見て、洸さんはいきなり目の前でパチンと手を合わせた。
「ごめんっ」
……へ?