はやく俺を、好きになれ。
見ていた水玉柄の帳を床に叩きつける。


いますぐにでも破りそうになったから手を離した。


見たくなかった。俺の知らない真優を。俺は真優の“女”の部分は知らない。


いままでアイツがどんな男と一緒に居て……何をしてきたのかも。


これまでこんなこと考えねえようにしてきた。だが切れた緒は直ぐに結ぶことは出来ねえ。



「クソ…ッ!」



真優の白い箪笥を蹴り飛ばす。人様の家の家具だなんて頭には毛頭考えになかった。


凄まじい音を立ててタンスは揺れる。幾ら物に当たっても俺の怒りは収まらない。


知らないことが、こんなにも癪に障るなんて。
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