ウソつき王子
く、苦しくなってきた。

でも頭は神谷君のがっしりした手に阻まれて、逃げたくても逃げられない。

「ぷはっ!!」


やっと唇が離れた。

キスってこんなにくるしいものなのかしら?

「次に泣いたら舌も入れるかんな!」

次?
そう言えば涙止まってる!

ビックリして涙引っ込んだのかも!

「俺の女になれ!だから、さっき見たこと、聞いたことは全部忘れろ!誰にも言うんじゃねえぞ!」
「俺のオンナ!?」
「つべこべ言うんじゃねえ!」
「ハイぃぃ!!」

そう言って神谷君は図書室から出ていった。

「はー、怖かった。」

私はわざと声にだした。
そして、床にペタンと座り込んでしまった。

本当に怖かった。

でもそれよりも、神谷君が実は肉食系男子だった、ってこと。

私が神谷君のオンナになるってこと。

いやいや、それはないでしょ。

こんなの夢に決まってる。

…そんなわけない。
自分でもわかってる。
だからといって、私が神谷君と付き合うっていうことを素直に受け止める自信はない。
そもそも付き合う気なんかないのに…

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