だから、恋なんて。
――ピリリリリッ
「はい、結城です」
多分、すぐに出られるように床にそのまま置いてた電話をワンコールで取る。
「あ、そうですか。波形どうですか」
途端に、医者の顔になる。
うん、やっぱり医者はそうじゃなくちゃね。
ご馳走さまでしたと手を合わせて、食べたものを取りあえずキッチンに運ぶ。
本当は食器くらい洗うのが礼儀だろうけど、きっと…。
「じゃ、一回見に行きます」
そうだよね、じゃあ私も一緒に出ないとコイツも出られないから。
申し訳ないけど洗い物はそのままで、鞄を持って玄関に向かう。
「あ、美咲さん」
「あれ、もう電話終わったの?」
「そうだけど…」
話しながら靴を履く私を怪訝そうに眺めている医者は、まだ携帯を握りしめたまま。