だから、恋なんて。
「私先に出る。またビクビクするの嫌だし」
「え、うん…」
くるりとドアに向いてノブを握ったところでお礼を忘れてたことに気付く。
「ご飯、ご馳走さまでした……って、なに?」
なんだろ、突っ立ったままで反応が鈍い。
私がお礼言わない人間だと思って吃驚したとか?なに、じっと見てるの?
「…帰るの?」
「は?」
なによ、泊まってくとか思ってたわけ?やっぱり、そういう女だと思ってたってこと?
私、バカみたいじゃない…また、簡単に引っかかった。
なんだかんだと言いくるめられて、たいして抵抗もしないうちに家にまで上がり込んで。
四十にもなって何やってんのよ。
まだ立ったままの医者をぎりっと睨みつけて、ドアを力一杯開けた。
と、ドアノブを握る手とは反対の腕をとられて、中途半端な体勢で引き止められる。