だから、恋なんて。
「ちょっ…離してよ」
「待って」
「…最悪。やっぱり簡単だとか、思った?」
「え?簡単?……あ、や、なんか違う。ごめん、俺、変なこと言った?」
「別に、どうでもいいから離して」
「やだ」
「っ、いい加減にしてよ。アンタ病院行くんでしょ!さっさと行きなさいよ」
つかまれた腕をぶんぶん振ってみるけれど、それは簡単に離されない。
薄暗い玄関先で、しかもドアは少しだけ開かれていて。
こんなとこで大声を出したことに、今さらながらシマッタと思う。
「うん、行くよ。でも美咲さんの誤解をちゃんと解きたい」
「誤解?」
「そう。さっきの俺の言い間違い」
さっきまでの呆然とした感じはどこへやら。
反対に首を傾げる私に、何故か照れくさそうに微笑んでいる。