だから、恋なんて。
「そーゆーところがズル賢くてヤなんですよっ」
居酒屋で力説するオジサンのように、飲んでいたウーロン茶のグラスをドンッとテーブルに置く。
その音にびっくりして周りを見回すけど、誰一人としてこちらに意識を向けないくらい、あちらこちらで盛り上がっている。
それってもしやウーロンハイとかじゃないよね……?
「同じ職場の子には手は出さないんですよ」
「そう、なの…」
「行く先々でそんなことしてたら仕事やりにくくてしょうがないじゃないですか」
「そう、だね」
「そんな手近なところで探さなくても言い寄ってくるオンナなんて山ほどいるって思ってるんですよ」
聞いてるうちに色々と頭の中で考えていたことがぐるぐる浮かんできて、だんだんとうつむきがちになる。