だから、恋なんて。
若くて調子に乗ってる時とは違って、もう将来のことを考えてもおかしくない歳になってもそういう恋しかしない、できないなんて。
ぼんやりと青見先生の背中を見ながらそんなことを考えて、気付く。
本気だって遊びだって、恋らしきものをしたことがないのは私も同じだと。
青見先生のようにポイポイ捨てる恋でもいいっていうんじゃないけど、先生は先生なりに本気になる人を探していて、結果そういう風に見えてしまうのかもしれなくて。
一歩ふみだすことも怖くて、好きになる前に一生懸命自分を無視して騙して、心を隠しきる。
歳を重ねるにつれて、自分を欺くことばかりが上手くなり、ほんとうは自分が何を求めているのか、欲しているのかわからなくなる。
結婚したいのかしたくないのか、恋人が欲しいのか欲しくないのか…。
周囲に言い訳して取り繕って、自分にでさえ嘘をついて。
……そんな不自由な自分を持て余している。