だから、恋なんて。
二次会の手配をしていく人を誘導しながら、帰る人もしくは帰らなきゃどうにもならない人を次々に呼んだタクシーに乗せて。
「次も行きたーい!」とゴネる師長も半ば引きずってタクシーに押し込む。
今はあんな感じだけど、家が近づくにつれて絶対正気を取り戻すはずだから、心配いらないし。
「さて、と」
角を曲がるタクシーのテールランプを見送って、最後に幹事としての務め、忘れ物のチェックをするために一人で店内に戻る。
もう店内に他のお客さんは疎らで、さっきまでの喧騒が嘘のように静か。
「……先に行かなかったっけ?」
襖を開けると、誰もいないはずの座敷でにっこり笑うチャラ医者。
二次会組引率の榊に連れられて先にカラオケに向かったはずなのに。
「へへ、美咲さん置いていけるわけないでしょ」
「別に…すぐに追いかけるつもりだったし」
「うん、でも心配だし?」