だから、恋なんて。

あれからもう一週間は過ぎるけど、アイツの態度は変わりがない。

「美咲さーん、お疲れ様でした」

「……お疲れ様です」

「ん?あれ?テンション低くない?あ、もしかしてヤキモチ妬いちゃった?」

「妬いてないです。夜勤明けなんでこんなもんです。ていうか、私の業務時間はもう終わってますんで、指示なら他の子に出してください。じゃ、お先です」

ろくに顔も見ずに頭を下げて、近くにいた日勤者に「お願いします」と声をかけてからさっさとチャラ医者に背中を向ける。

「あ、ちょっと、美咲さん?」なんて声も聞こえるけれど、そこはあっさり日勤者に捕まって点滴オーダーや処方オーダーを依頼されている。

休憩室に戻りながらその横顔にチラッと目をやると、案の定次々にスタッフに話しかけられ、すでにヘラヘラしているアイツがいて。

ざわついて不快な胸のうちを打ち消して、休憩室のドアを閉める。

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