だから、恋なんて。

だって、自分で凝った料理作って一人で食べるって結構むなしい。

疲れて帰って、自分のためだけにきちんと料理を作れるって、かなりのモチベーションを要する。

「噂のこと、ほんとに気にしてないみたいね」

うっかり泡だらけのお皿を落としそうになって、洗い物をする手が止まってしまう。

「もしかして……あの時?」

「そ、有意義な時間だったわよ?」

明太子にまみれて、まさか私の話題で二人が盛り上がっていたなんて。

まぁ、私と直人さんも避妊について話し合ってたけど。

「いいと思うけど、先生」

「………なにが」

「わかってるくせに。いつまでも気付かないふりはできないでしょ」

まるで私に考える時間を与えるように、千鶴は男二人の輪の中に入ってしまう。

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