だから、恋なんて。

「じゃ、先生、送り狼はダメよ?ほら、美咲そういうの嫌がるから」

「もちろん。心得てますよ」

玄関先で並んで見送られながら、いつの間にか共謀した千鶴と医者が話すのは、あの噂にまつわるなんやら。

私の話なのに、なんだかどんどん疎外感を感じてしまうのは、私の気のせいじゃなさそうで。

榊とか千鶴とか、攻略難しそうなところをすんなり自分の味方につけている気がする…?


ゆっくりと隣を歩く男をチラリと横目で観察すれば、目ざとく気付いてにっこりと裏のありそうな笑みをこぼす。

「……そーゆー無駄な愛想を振りまくのやめたら?」

「ん?俺?愛想いいかな」

「誰にだってテキトーに調子のいいこと言ってるじゃない」

「あれ、妬いてくれるの?嬉しいね」

「違う!医者なんだからさ、ヘラヘラ笑ってるより無口で冷静にしてるほうが威厳があっていいでしょ。ただでさ
えアンタは若く見られちゃうんだし」

核心にふれる言葉をサラッと言われて、取り繕うようにペラペラと勝手に口が動く。

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