だから、恋なんて。

ゆっくりと足を止めた医者につられるように自然と足が止まる。

逸らされない視線が、ゆっくりと下に降りると同時に、冷たく綺麗な指先に、下唇を撫でられ。

ただそれだけで、瞬時にゾクッとするくらい、見たことのない色気をまとっている……ように見えて。

地面に張り付けられたように一歩も動けない私を嘲笑うかのように、クスリと喉を鳴らした医者は壮絶に厄介だとわかる。

「…誰と比べてる?」

「え……誰と、って?」

「僕は医者だけど、浮気もしないし、適当にその辺の看護師さんに手をださないよ?」

「は?」

「大抵のことには寛容になれるつもりだけど、自分のものに手をつけられるのは好きじゃない」

「はぁ……」

「例え夢の中でも、他のオトコに手を出されるのは気分がいいもんじゃないね」


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