だから、恋なんて。
タクシーから転がるように降りた千鶴をお願いして一息つく。
「あ、先に美咲さんちですよね」
「そうだね、その方がいっか」
千鶴の家からは私のほうが近くだから、先に私の住所を運転手さんに告げる。
助手席に座っていた雫が、千鶴がいなくなって隣に座る。
「…美咲さん、どうするんですか?」
何が?と、聞くところじゃないのは雫の落ち着いた声のトーンで分かる。
その質問がアイツのことだっていうのも分かっている。
「どうしようね…」
他人にはどうだかわからないけど、私にとってはハードルが高すぎて投げだしたい問題。
いっそのこと、誰かがやり方とか台詞とか考えてくれたらいいのに。
お金払ったら全て請け負います、なんて業者がいたら飛びついてしまいそうなのはきっと私だけではないはず。