だから、恋なんて。

それでも、荷物を置くために休憩室に入るなり、壊れるくらいの強さでドアを閉められて、えらく神妙な顔をした榊に詰め寄られる心当りなんて……ない、はず。

「…私、なにかミスってた?」

「そうじゃないんです……あ~、昨日の時点でわかってたら絶対に勤務替わってたんですけど」

「なんの話?」

どうやら、重大なミスをしていたわけではないらしい。

買ってきたものを冷蔵庫に入れながらも少し安心する。


「………今日の当直、知ってます?」

らしくない言い方に振り返って榊の顔をうかがう。

急変があったって表情を変えずに処置に当たれる榊の顔が、気に入らないとでもいうように曇っていて、良くない報せだということはわかった。

< 317 / 365 >

この作品をシェア

pagetop