だから、恋なんて。

「知ってるわけないよ」

夜勤の相手だって把握してこないのに、当直の医者なんて気にするはずがない。

そりゃあ当直の医者にだって当たりはずれはあるけど、当直は当直。

用がなければ連絡することもないし、よっぽど重症の緊急入院でもない限りはそれほど関係ないのだから。

でもそんなことは榊だって重々承知しているはずで。

それでも、これだけ榊が難しい顔をしているんだから、すごーく嫌な予感がする。

「もしかして…」

「はい、そのもしかして、です」

「アイツ…?」

「はい、そのアイツ、です」

「……最悪」

「ですね」

年甲斐もなく、思わずチッと舌打ちが出てしまう。


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